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 ←3話 に、妊娠して学校辞めた!? →5話 君島智幸について
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青春アメとミエナイ彼女

4話 【企画会議】なにを撮る?

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 こうして、俺、海、真季、そして智幸の班員がすべて揃ったこところでチャイムが鳴った。六限目の授業開始の合図。
 するとドアが開いて堺教授が姿を現した。年の頃は四十代前半。無精ひげが特徴的で、猫背でのそのそと教室に入ってくると、智幸に一瞥をくれた。無事智幸がグループで固まっているところを見て安心したのか微笑を浮かべている。
 特に声をかけられることもなく、教授は教壇に立って指差しで出席を確認した。
「ひー、ふー、みー……おおっ、みんな揃ってるね! えらいえらい」
 受講生が全員席に着くと、教授がこほんと咳払いして言った。
「こんばんは、教授の堺です。去年からボクのゼミを受講している人も、今年から新しく受講してくれる人もシクヨローってことで。ボクの自己紹介は……まあいいよね、そんなのみんなネットで見てきてると思うし、なにより時間もったいないからね。初回の講義をくだらない世間話で潰す教授もいるけど、好きじゃないんだよねそういうの。だから春休み中にメンバー割り振ってゼミ長もこっちで指名しました。ゼミ長は、そこの席に座っている三浦九くんね。困ったら彼を頼ってあげて。はい、拍手」
 パチパチと拍手がして俺は形式的に席から立って一度頭を下げた。
「ボクも頼らせてもらっちゃおうかな、なんつって。あはは」
 すでに頼られましたよ、と文句のひとつも言いたいところだがいまはぐっと我慢しよう。
「じゃ、講義をはじめよっか」
 教授はチョークで、カッ、カッ、と黒板に授業スケージュールを書いていく。
 メディア学科はその名の通りこの世のありとあらゆるメディア全般の研究を扱う。広告、テレビ、ラジオ、本、ゲーム、映画、携帯電話、などがざっとあげられる。
 一年のうちは学科専門科目の必修は概論的な授業のほかに、映像制作に関する授業も受けてきた。映像構成の仕方、機材の扱い方、編集ソフトの使い方などだ。
 二年からのゼミは選択式で、自分の関心事や興味のあるテーマからどの教授のゼミを受けるか選択する。俺が選択した堺ゼミはメディアの中で主に映像を中心に置くゼミだ。
 今年度春学期、堺ゼミのシラバスに書かれた講義内容は映像制作。そして今回、映像制作するテーマは――
「PR映像だね。君たちにはうちの大学について紹介するPR映像を制作してもらう。テーマは大学に関するものなら自由だ。創始者の歴史でもいいし、大学の施設をクローズアップするのもアリ。ただし上映時間は四分以内におさめること。それが条件。完成した映像は東星大学メディア学科の公式サイトにアップするし、夏のオープンキャンパスで上映する。ボクの評価にプラス、オープンキャンパスで高校生たちにどのPR映像がよかったかアンケート取ってそこで一番票もらったグループはいい評価あげちゃうよ。……さて、なにか質問あるかな?」
「先生、質問なんですが」
 海が手を挙げた。
「どうぞ」
「出欠は毎回取るんですか?」
「いや、出欠は取らないし、成績に加点することもないよ。評価の判断は映像だけね。毎回教室に顔を出す必要はないから、このゼミの時間に撮影しにいってもらって構わないよ。ほかに質問は?」
 今度は俺が挙手した。
「ほかの班と企画がかぶったらどうするんですか?」
「正直、あまりよしとしたくないな。けどまあその場合は仕方ない。ほかの班と合同制作ってことで。ほかに質問…………ないみたいだね」
 パンと、堺教授が開始の合図のように手を叩いた。
「じゃあ割り振った班でまとまって。企画書ができた班からボクのところに持ってきて。チェックしてアドバイスするから。オーケイしたところから好きにしていいよ。もし決まらなかったら来週までにね」
 俺は受け取った企画書のテンプレートを確認。おおまかに『映像タイトル』、『撮影スタッフ』、『企画意図』、『内容』の四つで区切られている。
 さて、どうするか。
 周りのグループはさっそく打ち合わせをはじめていた。俺もみんなで話し合おうと隣に座っていた海とともにイスを反転。後ろの席に座っている智幸と真季とボックス席のように向い合う。
 で、二人はなにをやっていたかというと。
「うほっ、ユキちん肌が雪みたいに白くてキレー! 髪もつやつやじゃん! あたしが男ならほっとかねーな」
「だからユキちんって呼び方は……」
「さわさわさせて!」
「は? ちょ、ちょっと……っ」
「さわさわ! さわさわ!」
 真季は智幸の二の腕を触って触って触りまくって、そのうち好奇心をくすぐられたのか智幸にこちょこちょをしかけようとしていた。
「真面目に授業受けろバカ」ポカと効果音が出そうな手刀を俺が繰り出すと、「やられたー」真季が叩かれた頭を押さえておどけていた。
「い、いきなりなにするのかな! フツー人の体触らないよ。最低だ。もうっ」と、智幸は警戒するように自分自身で体を抱きしめながら、ちょっと照れくさそうにむくれてた。
「バカはほっとけ君島」
 きっと真季なりに智幸と仲良くなろうとしたのだが、真季は遠慮がなさすぎるな。
「さて、仕切り直して大学のPR映像だが、まずなにを映すか決めないとな」
 ゼミ長の自分が切り出して、話し合いがはじまった。
 まず俺の意見としては、創始者の歴史とか大学の授業内容とか、そういうのも悪くないと思うけど、キャンパスの施設のほうが画としてはわかりやすいんじゃないかということを伝えた。それも四分という限られた上映時間のなかで大学の施設を紹介するなら、場所も当然ひとつに絞るべき。
 そこで海が提案したのは、PR映像だから東星大学のウリ、ほかの大学と差別化されていて特色が出ている施設を撮ったほうが画面に映えして興味を引けるんじゃないかということ。
 ひとまずここが東星大学のオススメって場所をみんなで挙げていくことになって、リストを作ることになった。パソコン教室、就職支援センター、一〇〇周年記念館、スカイホール、医務室、キャンパス内コンビニ、生協、屋上、図書館、学生相談室――とにかく候補をあげていき、その中でどこがPR映像として面白いか話し合う。
 話し合いの結果決まったのは、食堂だった。
 理由はいくつかある。東星大学の食堂はフードコートのように広々としていて、和食、洋食、中華、さらには本格的なインドカレー店と七店舗が様々なメニューを提供している。さらにランキング形式のバラエティ番組に放送されたとき、大学食堂ランキング一位取ったことで話題になった。
 俺はまとめ役として『食堂のPR映像』の企画書を書き上げ、堺教授のもとへ提出しに向かった。
「堺先生」
「お、書き上がったかい。三浦の班が一番だね」
 俺が会社の制服を着て講義を受けていても堺教授はとくに珍しがることはなかった。いままで二部の講義を受け持ってきて、働きながら大学に通う学生を見てきたからだろうか。
「企画書提出する前に、ちょっといいですか」
「ん、なんだい?」
 智幸に聞こえないように小声で、しかし若干の険を含んで俺は言う。
「先生がくれた君島のメアド間違ってましたよ。もっとちゃんとしてくださいよ」
「あれ、そうなの? もしかして三浦、小文字のkを大文字のKで打ってない? もしくはドット入れ忘れてたとか」
「俺のせいっすか? 勘弁してくださいよ。こっちは事前に君島と連絡取れなかったせいで、あいつの性別勘違いして大変だったんですよ。女なら女って教えてほしかったです」
「あー、ごめんごめん。まあでもいいじゃないか。無事つれてきてくれたわけだし。せんきゅーということで」
 俺は呆れてため息を吐いた。
「……企画書、提出するんでチェックよろしくです」
「オーケイ」
 教授は企画書を受け取って読みはじめる。
 企画書の書き方は去年習った通りに書いた。ムダな文章は省いてこの映像ならではのポイントをわかりやすくまとめる。問題はないはず――と思っていたのだが、教授は眉根にしわを寄せた。
「食堂、ね……。実はこれと同じ企画書、もう提出されているんだよね」
「え」
 意味が分からなかった。
 だって、堺ゼミで最初に企画書を提出したのは俺たちのグループじゃないか。ほかのグループはいまだ顔を突き合わせて話し合っているぞ。
「うちのゼミの一部、昼の学生が食堂の映像撮るって企画書出してるんだよ」
 虚をつかれた。まったく予想していなかったところからの一撃に俺は唇を歪めた。
「そればっかりは……どうにもなりませんよ」
「まあ、そうだね。ボクからすれば企画かぶりは映像の多様性が減っちゃうしできるなら避けたいけど……」
「俺たちが遠慮しろってことですか」
「いや、ダメというわけじゃないよ。要は考え方次第だよ。例えば、食堂ひとつとっても映像のネタは膨大にある。珍しいメニューをアピールするのもいいし、食堂で働く人間の一日のスケジュールに密着するのもアリだね。ただ、テーマはやはり同じだから一部の学生と協力して合同で映像を仕上げることだね」
 一部の学生が先出ししているなら、講義の時間帯が後の俺たちはどうしても後出しになる。
 そのための合同制作という教授の措置なんだろうけど、なんだか納得できない部分もあった。
 もし俺たちが一部にいたならこの企画が潰れなかった――そう思ってしまうのはよくないことだろうか?
「……考え直します」
 俺が班に戻ると話を聞いていた海が「一部の人と合同制作はなにかと大変そうだし、もう一度考え直そうか」と提案する。真季に関しては「しっかたないよー、九ちゃん。ドンマイ、ドンマイ! もっといい企画考えればいーだけだって! 次、いってみよー」と能天気に笑いながら俺の肩をパシパシ叩いている。
「……それじゃあ、改めて企画書を作り直すぞ」
 話し合いは、しかし思っていたより難航した。
 リストの中で一番面白いと思った候補が食堂で、そこが使えないとなればほかの候補もどれも微妙に見えてくる。だとしたら、新しい候補を提案していくしかないが、脳をフル稼働させるが妙案は閃かず、真季なんか知恵熱でくらくらしたのか「あえてトイレじゃね? ほらうちのウォシュレットすごいじゃん。トイレットペッパーなんてパイプ100%だよ。ダブルエンボス加工だよ。女の子の肌にも優しいよ。あえてね、あえて」などと迷走しはじめた。
 煮詰まってきたなと思ったところで、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
「決まんなかったな。仕方ない、これは宿題だな。いったん時間を置いて考えたほうがいいな。大学の施設だけじゃなくて、一度頭をまっさらにしていろんな可能性を探ってみよう」
 来週のゼミまでにそれぞれPR映像の企画を考えることが宿題となった。
 第一回のゼミはそれで終了となった。

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