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青春アメとミエナイ彼女

26話 冷たいホットコーヒー

 ←25話 決断 →27話 世界を構築するのに必要な人間の最小単位
   ■クロスカッティング 青山海


 六号館校舎の一階にある教務課学生部。学生が往来するコンコース脇に設置されたそこは、まるで会社のオフィスみたいな場所で、僕は自分のデスクでパソコンと向き合っていた。
 教務課学生部の仕事は名前の通り学生に関することが主で、僕はいま夏の長期休み中に開かれる学生向け特講ポスターを作成していた。
「青山くん、作業中ごめんね」キーボードを打鍵していると先輩に呼ばれた。「新しく受付に来た学生の応対してくれるかな。ボク、いまこっちの子の話聞かなくちゃいけないから」
 窓口で学生の相談や事務的手続きなども学生部の仕事だ。僕は先輩にまかされた学生の応対をしようと窓口に立って、びっくりした。
 相手は君島さんだった。
「あ」
「あ」
 驚きがシンクロする。向こうも目を皿にしている。まさか僕が応対するとは想定していなかったのだろう。
 お互い顔を合わせるのは、こないだの撮影の日以来だ。あの、ひび割れしたような撮影以来……。
「やあ、君島さん」
 僕から声をかけた。気まずさをできる限り感じさせないように、にっこり微笑んだ。
「僕が教務課でバイトしてて驚いた? というか、知らなかったっけ?」
「……そういえば前に笹野さんが言っていたような気がする。すっかり忘れてたよ」
「カフェの手伝いはボランティアみたいなものだからさ、こうしてバイトしないとネパールへの渡航費用貯まらないんだよね。今年の夏休みもあっち行ってコーヒー豆栽培手伝おうと思ってるんだ。いやー、今年の豆はいいよ……って、いけないいけない。コーヒーの話になると僕ばっか話しちゃうね。君島さんの話を聞かないと。うちにどんな用かな?」
「えっと……」
 君島さんは目を伏せ、手に持っていた一枚の書類を隠すように背中へと回した。一瞬の出来事だったが、僕はその一瞬を見逃さなかった。
「ううん。やっぱりなんでもないんだ」
 なんでもない、ことはないはずだ。どんな書類かは知らないけど用事がないならわざわざ書類を窓口まで持ってくる必要はない。なのにこの場で急にごまかした原因は――僕か。
「そこまで大事なことじゃないから。また日を改めるよ」
「待って」窓口から立ち去ろうとする君島さんを呼び止めた。「今月、僕はほとんど教務課で仕事してるんだ」
 君島さんが足を止める。さらに追い打ちをかけた。
「僕がいない日でも学生の個人情報はデータ化されて職員たちで共有される。アルバイトの僕だって例外じゃない。僕がいるからって気が引けるなら意味のないことだよ。それにほら、また窓口に来るのも二度手間になって面倒だよね。それならその書類いま見せてもらったほうが効率的だと思うんだ」
 書類、と聞いて君島さんは隠したほうの腕をびくんと震わせた。沈黙して、どうしようか逡巡している。
 しばらく黙りこんでいた君島さんだけど、ずっと微笑んでいる僕を見て諦めたようにため息を吐いて書類を手渡ししてくれた。
 僕は君島さんの前で微笑を絶やすつもりはなかった。けれど、その文字列を目にした瞬間、ふっと風に吹き消されたように表情が消えた。
「退学届……」
 ショックだった。頭がかち割られそうになるぐらい。
「退学ってこんなペラペラな紙切れ一枚でできちゃうんだね。ちょっとびっくり」
 面食らった僕とは対照的に、君島さんの口元は半笑いを浮かべていた。
「名前、学籍番号、それに学科と住所、一言理由を書いて判子押したら終わり。すっごいあっさりだ。入学するときは受験勉強とか膨大な時間かけたのに、出ていくときは五分もかからないうちに書き終わっちゃった」
 退学までの流れも味気ないものだ。退学届けを受け取って指導教員と学部長に判子を押してもらったらそれで完了。一週間ほどで正式に退学と認められる。普段の僕ならそこで事務的に学生証を提出してくださいと手続きに移るけど、いまはうまく体が動かなかった。
 ――それほどなのか。
 退学するほど君島さんは考えて、悩んで、思い詰めていたのか。
「本気なの?」
「本気だよ」
 愚問だった。冗談で退学届を出す学生なんているわけがない。
 これまで様々な事情で退学していく学生を見届けてきた。経済的な事情、他大学への編入、親の死別での帰郷など、なかには明るい理由で大学を去る学生もいたが、大半は聞いていて面白くない内容だった。
 君島さんの場合は――『実家に帰るため』。そう簡潔に書かれていた。
 どうして実家に帰るのか、大事な部分が伝わらない。
「聞いていいかな。君島さんが退学する理由」
「そこに書いてある通りだよ」
「教務課のスタッフは、もう少し踏み込んだ理由を聞くのも仕事のうちなんだ」
 嘘をついた。本来ならすぐに手続きへと移る。それは仕事として余計な詮索は不要だし、退学の理由なんてたいていは暗い影が差しているのでほじくり返すべきではない配慮だ。
 けど、仲間がいなくなるのに「はいそうですか」なんて簡単に頷けるか?
「退学の理由、聞かせてくれないかな」
「……私一人っ子でさ、家のこととか手伝ってほしいって、前からお父さんに帰ってこい帰ってこいって言われてたんだよ。もう、本当にバカ親でさ、参っちゃうよね。お母さんだって言葉にはしないけど私がそばにいるほうが安心できて、戻ってきてほしいと思っててさ」
「本当にそれだけの理由?」
「…………」
 君島さんは少しだけ目線を落とす。
 一呼吸置いて、答えてくれた。
「ここにいないほうがいいと思ったんだ」
 重々しい空気が僕たちのあいだに流れた。
 僕は、こんなときどんな言葉をかけるべきなのか必死に探っていると、君島さんが恐る恐る聞いてきた。
「私のこと、もう聞いた?」
 私のこと――それだけでなにが言いたいかわかった。
「……九に教えてもらった。ごめん。本当なら君島さんの口から聞くべきだったんだろうけど、撮影の日いろいろあったから、僕と真季が九に聞いて……知った」
「そっか。別に謝らなくていいよ。三浦くんが話すのは当然のことだと思うから」
「僕は無意識のうちに君が嫌がることをしていたかもしれない。真季も、気にしてた」
「だから別にいいって。笹野さんに申し訳なさそうにされるとこっちまで調子狂っちゃうよ。私のほうこそ最初に言うべきだったかもしれない。ただ、こういうこといちいち言うの、すごくエネルギーがいるっていうか、なんていうか、ね」
 君島さんが短くなった髪を指でいじりながら空笑いした。
 君島さんの事情を知っても、僕はまだ断髪したこの人の気持ちすべてを理解しているわけではなかった。
 切り落とされた髪の影響でやや偏って見えるけど、今日の君島さんの服装は爽やかな白のシャツにカーゴスキニーと中性的に見える。
 服は時に口以上に物を言うという言葉がある。
 短髪になった決意とは裏腹に、まだ、中性的な曖昧さがあって、どこかで揺らいでいる部分を残しているのではないだろうか。
 どうするべきか。
 いや、どうしようもないのだ。
 僕はいま教務課の職員で、君島さんの退学届を受け取って処理するしかない。本人の決断にどうこう言うのは職員の仕事ではない。これまでと同じようにお疲れ様でしたと声をかけて退学者の背中を見届けるしかないのだ。
「…………」
 ――なんて割り切れないよね、やっぱ。
「ちょっと待ってて、君島さん」
 きょとんとする君島さんを窓口で立たせたまま、僕は自分のデスクへと戻る。卓上に置かれた持参のコーヒーメーカー。その場で手動コーヒミルを取り出して焙煎して豆をゴリゴリ挽く。粉上にしたらコーヒーメーカに入れて電源を押す。シュゴーと音を立ててドリップされていく。
 ほかの職員に「なにやってるの?」と聞かれ、「どうしても、いまどうしても飲ましたい人がいて」と説明すると、「青山くんのコーヒー好きにはホントに呆れる」なんて苦笑されたけど怒られはしなかった。
 アルバイトをはじめたばかりの頃、コーヒーメーカーを丸ごと運んできたときは周りに驚かれた。わざわざ自前で淹れなくても、自販機の缶コーヒーを買えばいいじゃんと苦笑された。
 でも、僕が淹れたコーヒーをみんなに配ると「おいしい」と喜んでくれて、豆の種類や淹れ方など聞きにくる職員もいた。コーヒーの深みにはまっていって、少しずつ周りの反応が変わっていく様が嬉しかった。最初は変だと思われていたコーヒーメーカーも、気づけばないほうがおかしくなっていった。
 この場所に置いてあるのが、普通になった。
 ホット用の使い捨て紙コップに深い黒がそそがれる。湯気が立ちこめ、広がる香ばしい匂い。二つ分持っていって、ひとつは僕の、もうひとつを窓口の君島さんに差し出した。
「はい、どうぞ」
「えっと……」
 君島さんは困惑していた。まさか退学届出しにきてコーヒーが出てくるとは予想していなかったのだろう。
「君島さんにどうしてもネパールのみんなで作ったコーヒーを飲んでもらいたくて。せめて一度くらいは」
「でも、私苦いのは……」
「お願い。一口、とりあえず、一口でもいいから飲んでほしいんだ」
「……じゃあ、一口」
 しぶしぶ、といった感じだが小さな両手で受け取ってくれた。猫舌なのか、ふーふーと息をかけて冷めるのを待っている。
 僕は先に一口飲む。癖になるような苦味と熱が体中に巡る。慣れ親しんだ味はまるで故郷に戻ったような心地で自然と落ち着いた。
「君島さんってひとりで思い詰めるタイプ?」
「……どうしてそう思うのかな?」
「なんとなく、かな。僕が前はそうだったんだよ。だれに相談してもどうせわかりっこない。自分の問題を解決できるのは自分だけだ。そう、追い込むように思い詰めていた。真季と付き合う前までは」
 カップの中にぐるぐる渦巻くコーヒーを眺めていると、黒の水面に過去のいろんな思い出が映っていた。
「去年の話なんだけど……いや、正確に言うならノロケ話。そうだね、ノロケ話なんだけど聞いてくれるかな」
「……ノロケって、フツー正々堂々とそういうこと言うかな」
「あはは。九はなかなか聞いてくれなくてさ」
 ひとまず君島さんは嫌な顔をしなかったので僕は続けた。
「真季との出会いは、去年同じゼミになったからなんだ。そこに九もいて、去年のゼミもそれはもう楽しかったよ。ゼミがはじまる前にさ、真季の話すことやることくだらなくて、くだらなすぎて逆に僕には笑えちゃって、いまと一緒。君島さんならわかるでしょ」
「……バカみたいなことで賑やかな笹野さんはイメージしやすいよ」
「ははっ、そうそう。賑やかなんだよ、とにかく。真季っていつもカラカラ笑ってた。ホント、四六時中笑ってたんだ。小さな太陽みたいに明るくて、陽気で、彼女のそばにいるとなんだか照らされたみたいに温かくなって……うん、僕は真季が好きになった。そのうち真季のほうも僕に好意を持ってくれていることを知った。でも……あのときは一歩踏み出せなかったんだよなぁ」
 冷たくなりそうな心を温めようとホットコーヒーをずずっとすすった。
 思い出すのは、お互いに気持ちが向きあっているのに、これ以上は近寄ってはないけないと真季に対して距離を置いて後ろを向いていた過去。
「前にも言ったよね、大学を卒業したら僕はネパールに滞在するって。ネパールのコーヒー豆栽培が定着して、流通も整って、現地の人々の生活が安定するまでは向こうで過ごすつもりなんだ。それって何年、ひょっとしたら何十年かかるかもしれない。ときには日本に戻ることもあるだろうけど、それはほんの数日程度。つまりさ、日本からいなくなるってことは、真季と別れが約束されてるんだよね。だから、だからね……好きだって言えなかった」
「……ノロケじゃないじゃん」
 君島さんはまなじりを下げてうつむいた。まるで自分の痛みのように下唇をきゅっと噛み締めた。
「好きだって言って付き合ったら、一緒に時間を過ごして、二人でたくさん思い出作るよね。そのときは楽しいよ。絶対に楽しい。でも、別れるときにその思い出が今度は痛くなる。お互い、思い出があればあるほど辛くなるなんて簡単に想像がつく。膨らんだ風船が破裂するみたいに傷つくんだって想像したら、僕は気持ちを伝えられなかった。伝えることが相手を傷つけることにもつながると思った。自分の気持ちを殺して、僕じゃないほかの人を選んだほうが真季にとって最良だと思ったんだ」
 いま思い返せばやっぱり僕は思い詰めていたのだろう。真季にとっての最良は真季自身が決めることなのに、僕が勝手に定義していた。
 真季にはラジオ局で働く夢があった。もし、ありえないことではあるが、その夢を捨ててまでネパールに行くと強い想いを抱えてくれたとしても、僕はやはり首を横に振る。夢は尊重されるべきだし、ずっと日本で育った女の子にはネパールの治安の悪さは過酷だ。最貧国。ちらつくのは殺された僕の先輩。邦人なんて歩く金品みたいなものだろう。
「その年もやっぱり長期休暇のときネパールに行ったんだけど、こう、なんていうんだろ、胸が重苦しくて、作業していてもぼんやりしちゃって……ある日ホテルに戻ったらふっと力が入らなくて倒れちゃったんだ。もうひどい状態でさ、嘔吐するし、熱は出るし、目眩がひどくてまともに立っていられなくて、体が自由に動かないんだよ。さすがに焦るよね。朦朧とする意識のなかで連絡を取らなくちゃいけないとは思うけど、そこで『だれに?』って疑問が湧いたんだ。現地の知り合いがいるのは電話すらない田舎の貧乏な村。両親は僕のことを放蕩息子だと愛想を尽かしている。答えが出ないまま何日も寝込んだんだよ。帰国予定日も過ぎてこれは本格的にやばいなーって思っていたら幻覚を見たんだよ」
「幻覚?」
「目の前にいるんだよ、九と真季が」
「……末期だよ、それ」
「だよね。僕もいよいよ末期だなぁと思っててさ、そしたら『幻じゃねえよバカ』って九が僕の頬ペチペチ叩くの」
 うそ、と君島さんが唖然とした。
「むちゃくちゃだ、そんなの……」
「だね、僕もさすがにびっくりしたよ。僕の帰国が遅いって理由でネパールまで来ちゃうんだから」
 ネパールに出立前、九に一応寝泊りする場所教えとけと言われていた。必要ないと思ったけど、もしものときに動くのがゼミ長だと九がうるさくてホテルの電話番号と住所は伝えておいた。帰国予定日を過ぎてもなにも連絡がないから九が国際電話をかけたらしいけど、格安ホテルで満足に英語を話せるホテルマンはおらず、なにを言っているかサッパリだったらしい。
 大使館に連絡したがどうも動きが遅い。不安は真季にも伝わった。もうそれならいっそネパールに行こうと九が提案して二人は大胆にも渡航した。二人とも修学旅行のときにパスポートは作っていたらしいが、かなり安直だ。トラベル英会話の本を片手によく僕が寝泊りするホテルにたどりつけたのものだと思う。
「それでね、真季が僕を見て泣くんだよ。どうやらそのとき僕はミイラみたいにすり減ってたらしくて、か細くなった手を取ってわんわん泣くの。参ったよ。いつも笑ってる真季が滝のように涙を流すとは思ってなかったから」
 時間が経ったいまでも鮮明に覚えている。真季の目から溢れた滴が頬を伝って、僕の手に流れ落ちたこと。
 申し訳なさで胸が苦しくなったと同時に、すごく安心してしまったこと。
「それで九が言ったんだよ。まるで学校で会ったときの挨拶みたいに飾りげなく言ったんだ。『意外と近かったぞ』って」
 なんかおかしくて、笑った。
 その一言で、いままで自分の悩んでいたことがちっぽけに見えて、馬鹿馬鹿しくなっちゃって、すごく気持ちが軽くなった。
「日本に帰ってきて、僕は真っ先に真季に自分の気持ちを口にしたよ」
 君島さんは境界線を踏み越えた僕の姿をうまく想像できないのか、眉根を寄せて険しい顔つきをしていた。
「……わからないよ」
「わからない?」
「思い出ができると辛くなるってわかってるんでしょ」
「そうだろうね。ネパールに行くときなんて僕わんわん泣いちゃうかも」
「それなのにどうして……好きっていうと、相手を傷つけるって思ってたんでしょ」
「でも、傷つくだけじゃないとも思った」
 悲痛な顔をする君島さんをそっと支えるように、言った。
「あるとき真季に言われたよ。『海ちゃんは付き合うことを重く捉え過ぎ、付き合うことが一大事件の少女漫画じゃあるまいし。おぬしはピュアなヒロインか』ってさ。確かにって思ったな。付き合うって考え方は人それぞれだけど、まだ二十歳なんだし、傷ついて辛くなるかどうか、付き合ってから判断するって考え方だって悪くないと思ったんだ」
 君島さんはそれでも納得できないのかぶんぶんと首を振った。
「いまはまだ一緒にいるからそう思えるんだよ。二人に壁がないから平気でいられるんだよ」
「そうかもね。けど、高くて絶対に越えることができない壁って、案外それって自分の思いこみだったりするんじゃないかな。意外と、その気になればひょいって越えられる。だって真季がそうだった。ネパールまで来ちゃった。なんだ、あっさり越えてるんだ、自分が悩んでることってちっぽけだなーって思わされちゃったよ」
「でも離ればなれなんだよ」
「確かに」
「ずっと会えないんだよっ」
「うん」
「なんで気持ちが変わらないなんて言い切れるの!?」
「好きになっちゃったからね」
 僕は苦笑した。
 シンプルで、突き詰めればこれ以上の理由はほかに存在しない言葉だった。
「好きなんだから、もうこればっかりは仕方ないや」
 お手上げだと、僕はちょっとおどけたように両手を上げた。
「それに、意外と日本とネパールって近いみたいだし」
 陽気に笑った。真季からもらったものを、少しでも君島さんに分け与えられたらと思って。
「難しいよ」それでも君島さんの表情は曇ったままだった。「……だれもが青山くんのように割り切れないよ」
 うっすらと見えない膜が君島さんを覆っていて、僕の声が届いているかわからなかった。
 君島さんはぬるくなったコーヒーを一口飲んだ。「三ツ矢サイダーばっか飲んでるからかな。子どもの私には……苦いな」そう言って飲み残したままの紙コップを置いて、窓口から離れようとした。
「退学すること、ゼミのみんなには言わないでほしい」
「君島さん、君は――」
「コーヒー、ありがとう。退学届、よろくしね」


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