スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←8話 あんなことがあったのに →10話 【企画会議3】Girls On Film
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【8話 あんなことがあったのに】へ
  • 【10話 【企画会議3】Girls On Film】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

青春アメとミエナイ彼女

9話 【企画会議2】ゆるキャラ

 ←8話 あんなことがあったのに →10話 【企画会議3】Girls On Film


 二回目のゼミがはじまった。
 前回と同じように俺たち四人は座席にまとまって話し合いをはじめた。
「みんな、約束通り企画は考えてきたな。今日はそれぞれ発表してもらうから」
 話すべきテーマはPR映像の企画について。メンバーそれぞれ考えた企画を発表して、どの企画を採用するか話し合う。形式的にはプレゼンテーションに近い。
「ずるずる遅れると撮影と編集にしわ寄せがくるから今日で企画を決定するぞ。さて、だれから発表する?」
「はいはーい! あたし! あたしから発表しちゃうよ!」
 真季が元気よくイスから立ち上がってみんなに企画書を配る。こほん、とわざとらしく咳払いをして切り出した。
「それでは皆々方、ワタクシが用意したレジュメをご覧あれ」
 俺は渡された企画書にざっと目を通す。
 企画タイトルは『東星大学コレクション』。
 概要は、東星大学に通っている女の子を被写体に、ひとりひとりポージングさせてフルショットで撮影していく。ひとり一秒ほどのカットで計六十人分。パティ・オースティンの『Kiss』をBGMに東星大学に在学中の女子大生を紹介する。
 眉をひそめた。この企画は――
「アド街の人気コーナーのパクリじゃねえか!」
「てへ、バレた!」
 ペロッと舌を出してごまかすな。
「パクリっていうか正確にはオマージュ? たいていの人が知っているコーナーならとっつきやすいと思ってそうしたんさ。それにまるっきりパクリってわけじゃないよ。ちゃんと観てくれる人の心を掴もうとサービス要素も入れる予定なのだ。というわけでトモちん、水着で出演よろしく」
「はぁ!?」
 水着という単語を過剰に意識したのか、智幸はびくんと体を跳ね上がらせてかあっと顔を朱に染めた。
「ば、バカじゃないかなっ! 私が水着なんてなに考えてるの!」
「一秒のカットで次から次へと移り変わる女の子たち。その一瞬のカットで突如現れた水着美女。『うお、なんか可愛い子いたけどすぐ流れた! また見たい!』と、鼻息を荒くした男子どもは何度も映像を見直す。あたしが仕組んだサブリミナル効果によって潜在意識の境界領域を刺激された男子どもはその美少女を探しに大学に入学してくるパーペキな展開。はいPR成功。はいあたし天才。この戦、勝ち申したぞ!」
「可愛い子、美少女……」一瞬、油断したように惚けた智幸だったがすぐ首を振る。「意味わかんないよ! み、水着なんて無理! ぜったいに無理だから!」
「おおっ、普段素っ気ないトモちんが思いのほか動揺してる! だいじょーぶ、あたしがおすすめの水着を選んでやっちゃるけんね! フヒヒ」
 真季は下卑た笑みを浮かべ、指を触手みたいにうごめかせて迫るが、智幸はノートを丸めて武装してコントみたいに切り払っていた。
「バッカじゃないかな! 大学の公式サイトに載っける映像だよ。水着なんてNGに決まってるんだ。そもそも発想が水着っていつの時代の深夜番組だよ。一週間あったんだからもっとマシな企画考えられなかったの。もっとまじめにやったら!」
「あたしだって考えるには考えたんさ。けどさー」
 真季はふてくされた顔でリュックから企画書を取り出した。俺も智幸もどうせ考えたといっても一、二種類だろうと高をくくっていた。だから、どんっ、とテーブルの上に置かれた分厚い企画書の束を見てぎょっと目を丸めた。
「ざっと百ぐらい企画考えたんだけど、どうもぱっとしないんだよねー」
「ちゃんと真面目に考えてんじゃねーか! そっち出せよ!」
「えー、なんかなー。だってほかに思いついた企画、『場所』ばっかりで『人』じゃないんだもん。前の話し合いでも『場所』ばかり取り上げられてたじゃん。でも考えて見たら、『人』の映像のほうが面白いのかなーって」
「その考え方は嫌いじゃないが、ほかの企画書を俺たちに見せてもいいだろ。真季にはいまいちでも、俺たちにはアリかもしれないだろ」
「うーん、やっぱダメ。ボツだよこれ。自分が面白くないと思ったものが他人の心を動かせるわけないよ。というわけでトモチンGO!」
 真季にしては妙に説得力があるセリフだが、無茶振りされた智幸はたまったものじゃないだろう。いまだ真季の触手をノートの剣でポカポカ叩き落している。
「却下だよ! 却下! なんで私に水着着させようとするのかな。もうっ」
「トモちんは反対だけど、おやおやー、男子陣はまだ反対してないぞー。ふふふ、やっぱり水着の誘惑には迷っているみたいだなー。テンプテーション!」
 キッと音が出そうなほど目尻をつり上げる智幸は、なぜか海はスルーして俺だけを睨みつけた。
「最低だ、君」
「おい、どうして俺だけ目の敵にされなくちゃいけないんだよ。海だって反対してないだろうが」
 まあ確かに、真季の言う通り強くは否定してないけど。
 その後も智幸の強い反対にあり、俺も智幸にずっと睨まれるのが嫌で反対票に一票入れざるを得ず、企画はボツとなった。するとノートの剣が真季の脳天を直撃させ、「ぐはっ、やられた! オノーレ!」と企画ともども倒れた。
「じゃあ、次は僕が発表しようかな」いつのまにかひとり優雅に自家製コーヒーを飲んでいた海が立ち上がり、用意していた企画書をみんなに回す。
「タイトルは……『大学がある街、白山の紹介』? おい、海。大学のPR映像だぞ、街を紹介してどうする」
「あえて発想を変えてみたんだ。前回の話し合いで大学の施設ばかり意識がいきがちだったから、逆に大学付近をピックアップしてみようかなって」
「それで特集するところは……ネパールコーヒーが飲めるお店『カトマンズ・カフェ』。栽培地域はヒマラヤ山系でハイランドが主流、有機栽培をウリにしたコーヒー豆の魅力を余すことなく紹介、店主であるヤーダブさんにインタビュー……っておい! これ海が手伝っているカフェだろ!」
「ステルスマーケティングをしかけようと思っていたんだけど、さすが九だね。見抜かれちゃったか」
「いまやるべきこと大学のPRな! 店のPRしてどうすんだよ! 却下だ!」
「残念だよ。すごく残念だ……。じゃあ君島さん、いま君のためにコーヒーを淹れるからぜひ飲んでほしい。こないだ飲ませてあげられなかったから今回こそはっ」
「君島にPRすんな! まったく、真季にしても海にしても好き勝手やりやがって。サブリミナル効果もステルスマーケティングもいらねえんだよ。次だ、次。君島、みんなに企画を発表してくれ」
「わかったよ。二人よりずっとまともだから安心して」
 そんな彼女から手渡された企画書は――『東星大学のマスコットキャラ〝オットーセイくん〟について』。
 世間的なゆるキャラブームの影響を受けてか、東星大学も数年前からマスコットを作ったらしい。それがオットーセイくん。
 オットセイをデフォルメした二頭身キャラクターで額には〝東星〟の文字が刻まれ(筋肉マンかよ)、仙人みたいなヒゲがはえている。おまけにオットセイのくせにふかふかな体毛でキャラ崩壊っぷりも半端なく、正直デザインはどうかと思う。
「うちのゆるキャラを題材に持ってきたのはいいね! この発想はなかったぜトモちん」好感触の真季に海も首肯して、「僕も悪くないと思う。ゆるキャラならだれが見てもとっつきやすいし、ウケるかもね。でもどうして君島さんはうちの大学のマスコットに目をつけたのかな?」
 特に深い意図がない、好奇心からくる何気ない質問だったと思う。それでも智幸はなぜだか照れくさそうに指で前髪をいじっていた。
「前から気になってたんだ、オットーセイくん。……その、可愛いから、さ」
 ほう、と俺は納得すると、智幸はなぜだかむっとした。
「三浦くん、いまちょっと笑ってなかった?」
「え? 別に笑ってないけど」
「こんな私が可愛いとか言うのは変だって心の声が聞こえたよ。ひどい、最低だね、君」
「だから笑ってねえって。さっきからお前妙に因縁つけてくんな。ただマスコットキャラに目をつけるってのは、女っぽい発想だなと思っただけだ」
「……ホント?」
「ホント。ただ、俺はあのキャラがまったく可愛いとは思わん」
「君、あの愛くるしさがわからないの!?」
 バンッと両手を叩いて抗議してくる智幸。うおっ、と俺は驚いてイスごと後ろに倒れそうになった。
「あのもふもふなボディ、くるくるなおひげ、クリクリな瞳を見て君はきゅんきゅんしないの!? もふもふでくるくるでクリクリなんだ! なのに可愛くないって、信じられないよ君!」
 熱弁をふるう智幸に賛同したのは真季だった。「わかる! わかるよトモちん! あたし、大学生協に売ってるオットーセイくんボールペン買ったもん」
 さっきまでいがみあっていた二人がいきなり意気投合しはじめる。
 女子心をくすぐる魅力があのキャラクターにはあるのか。男の俺にはオットセイまがいのバケモノにしか見えないのだが。
 企画書を読み返す。
 映像の構成はオットーセイくんの紹介を中心に、なぜオットーセイくんは生まれたのか、オットーセイくんに込められたデザイナーの願い、オットーセイくんの活動、その三点。
 押さえるべきポイントは押さえている。構成はいいだろう。ポイントを三つにまとめてくれればわかりやすいし、上映時間的にも悪くない。
 だが、この企画には致命的な問題があった。
「君島、これは映像にできない」
 俺はハッキリ首を横に振った。
「実はな、オットーセイくんを紹介する映像ってすでに存在してるんだよ。かぶってるんだ」
 え、と智幸は目を瞬かせた。
「大学側がすでに制作してるんだ。大学の公式サイトにはアップされてないからお前も気づかなかったんだろうけど、オープンキャンパスで直接公開するんだよ。去年、俺がオープンキャンパスに来たとき映像観たから間違いない。しかも企画の内容とほぼ同じ。キャラクターを紹介する映像なんて個性は出にくいからな。もし俺たちがオットーセイくんのPR映像を公開したら、大学側と俺たちの紹介映像まるかぶりだ。さして代わり映えのない二つの映像を観客に観せることになるのは避けたいな」
「それは、そうだね……」智幸は明らかにしょげた声を出していた。「残念。せっかくオットーセイくんの映像作れると思ったのに。ボツかぁ……」
 気の毒だが、こればかりは安易に賛成できない。
 これで、企画を出した三人中三人ともボツか。
「マズイね。今日中に決めないといけないのにな」海は大根役者みたいに棒読みだった。「それじゃあ、最後の九の企画に賭けようか」
 やや前傾姿勢になってテーブルの上で手を組み、うっすらと微笑んでいる。こいつ、はじめから俺の企画目当てだったな。
「賭けられても困る」
 企画に自信があるなら最初に発表している。
 真季ほどではないが、俺もこの一週間思いつく限りの企画を考えた。数ある中から厳選して、ひとつの企画を選んだ――というより、この企画以外やりたくなかったのだろう。思いついたときからほかの企画案はすべてくすんで見えた。そういう点で俺は真季と一緒だ。やりたいから生まれた。
 でもそれは裏を返せば自己満足的な部分が強い。だからそこまで自信があるというわけではない。
 かすかな不安を抱えながら俺は企画書を真季と海に配って、智幸と向き合った。
 ――私も、普通じゃないから。
 あの屋上で智幸は土砂降りの俺に傘を差してくれた。けど、それだけだ。
 どう普通じゃないと言うのだ?
 あいつは胸の奥になにを持っている?
「なに、かな? 私をじっと見て」
「いや、なんでもない。これ、読んでくれ」
 俺は智幸に企画書を手渡した。

関連記事
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【8話 あんなことがあったのに】へ
  • 【10話 【企画会議3】Girls On Film】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【8話 あんなことがあったのに】へ
  • 【10話 【企画会議3】Girls On Film】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。